東京大学大学院農学生命科学研究科発表概要我々はミトコンドリア(注1)においてアポトーシス(注2)を促進する働きをもつBak(注3)遺伝子が老人性難聴の発症機構に必須であることを明らかにしました。またミトコンドリアにおける活性酸素(注4)種レベルの増加や酸化ストレス障害の増加がBakの活性化を誘導し老人性難聴を引き起こすこと、さらに抗酸化物質であるアルファリポ酸とコエンザイムQ10がBakの発現を抑制し、老人性難聴の発症を遅延することを明らかにしました。今回の研究成果は内耳老化機構の解明、高齢者の健康維持、そして老人性難聴の予防法・治療法の確立に役立つことが期待されます。本研究は、東京大学大学院農学生命科学研究科、東京大学大学院医学系研究科耳鼻咽喉科、ウィスコンシン大学マディソン校遺伝子学部、フロリダ大学老化学部、ニューヨーク州立大学バッファロー校聴覚・難聴センター、ワシントン大学病理学部との共同研究の成果です。 本研究成果は、米国の科学アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)」オンライン版に11月9日(米国東部時間)に掲載されました。 用語解説注1:ミトコンドリア エネルギー産生や呼吸代謝の役目をもつ細胞小器官。 注2:アポトーシス プログラム化された細胞死。 注3:Bak ミトコンドリアに局在しアポトーシスを促進するタンパク質。Bcl-2ファミリーのメンバー。 注4:活性酸素 活性化された状態の酸素分子とその関連物質。 |
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先週の11月10日に、東京大学大学院農学生命科学研究科の染谷先生らの「老人性難聴の発症の仕組みを解明した」という内容の論文が、米国の科学アカデミーオンライン版に掲載されました。その概要は右の通りです。 この論文には、コエンザイムQ10が、老人性難聴の発症を遅らせるという実験結果が示されています。コエンザイムQ10というのは、CoQ10といってサプリメントでもおなじみなので、皆さんもテレビ等でお耳にされたことがあると思います。 人間にはアポトーシスといって、遺伝子にプログラムされた細胞死があって、難聴は加齢による内耳の感覚器のアポトーシスが原因で、細胞が徐々に死滅して、耳が聞こえなくなるようです。今回の発表では、そのアポトーシスを遅らせるのが、CoQ10だということが解明されたらしいです。 コ・エンザイムのエンザイムは酵素という意味で、コエンザイムは補助酵素というi意味です。。補助酵素Qはユビキノンという物質で、ミトコンドリアの電子伝達系に関与しています。ミトコンドリアはエネルギーの元(ATP)を生産する細胞で、それゆえにミトコンドリアは細胞のエネルギー生産工場と言われています。そのミトコンドリアは、肝細胞や心臓、筋肉さらに神経細胞など、エネルギーを大量に必要とする組織に多いので、聴覚細胞のエネルギー源を枯渇させないために、CoQ10を摂取するというのは悪い話ではなさそうです。 老人性難聴や突発性難聴など、鍼灸による難聴治療においては、当然の事ながら死んでしまった細胞を生き返らせることはできませんが、その初期の段階ではよく効くケースがあります。鍼灸治療の主な目的は、血液循環を高めて、聴細胞に酸素を多く送り込むことにあります。 |
西洋医学において、老人性難聴はこのように解明されつつありますが、突発性難聴にはウイルス原因説や内耳循環障害説があり、どのような治療が効果的かはまだ未解明ですが、ステロイド投与は抗炎症作用や活性酵素抑制作用という観点から、ウイルス説や循環障害説の両方を満たす治療方法です。ステロイドの効果があまり出なかった患者さんの場合は、内耳循環の改善を目指す鍼治療は、積極的にお試しいただく選択肢の一つであると思います。
